相談者(40代男性)
当社では新たに商標出願を検討しています。出願する区分は決まっているのですが、どの商品を選べばよいか、様々な種類があって悩んでいます。全部選んで何かリスクはありますでしょうか。
回答者:弁理士
商標出願では、基本的に1つの区分で22個の類似群コードの範囲でしか登録が認められません。その範囲で商品・サービスをどう選ぶかは、自社が現在使用している商品・サービスに加え、将来使うかどうか、他社の先行商標と被るかどうかなどをふまえ、できるだけ広くカバーしておくことが有効です。
指定商品は1区分類似群コード22個まで指定可能
商標出願では、登録を受けようとする商標だけでなく、その商標を使用する商品・サービスも特定する必要があります。商標権は、登録した商標を指定商品・指定役務について使用する権利であり、商標が登録されればあらゆる商品・サービスが保護されるわけではありません。そのため、商標そのものの選定と同様に、指定商品・指定役務の選定も重要です。
商品・サービスは、第1類から第45類までの区分に分類されています。出願人は必要な区分を選び、その中から保護を求める商品・サービスを指定します。ただし、区分を選択しただけで、その区分に属するすべての商品・サービスが保護されるわけではありません。出願書類において、必要な商品・サービスを適切に指定する必要があります。
選定にあたっては、類似群コードにも注意が必要です。類似群コードは、商品・サービスの類似関係を判断するために用いられる識別コードです。原則として1区分につき22個まで指定できるため、同じ区分に属する商品・サービスを無制限に選ぶことはできません。なお、上限は商品・サービスの名称の数ではなく、類似群コードの数で判断されます。
この制約がある以上、必要な商品・サービスを整理し、優先順位を付けることが重要です。重要な範囲を指定から漏らせば十分な保護を得られず、必要性の低い範囲まで指定すれば費用が無駄になる可能性があります。そこで本稿では、限られた類似群コードの枠内で、事業に役立つ指定商品・指定役務を選別するための考え方を解説します。
とにかく目いっぱい拾う
指定商品・指定役務を選ぶ際には、まず幅広く候補を拾い上げることが大切です。1区分につき類似群コード22個という上限はありますが、分類を適切に整理すれば、想定以上に広い範囲を指定できる場合があります。最初から候補を絞り込むと、必要な権利範囲まで狭めてしまうおそれがあるため、まずは必要となり得る商品・サービスを洗い出します。
最初に確認すべきなのは、現在、自社が使用している商品・サービスです。事業活動の実態を踏まえ、提供している商品・サービスに漏れがないかを確認します。関連する商品とサービスであっても分類が異なる場合があるため、名称だけで判断せず、事業内容を幅広く見直すことが重要です。現在の事業を十分に保護できることを、選定の基本とします。
次に、現時点では使用していなくても、将来使用する可能性がある商品・サービスを候補に加えます。事業の拡大や提供内容の変更によって、必要な権利範囲が変わることもあります。経営計画や事業方針を踏まえ、将来の展開に必要となり得る範囲も検討します。
こうして候補を集めた後、類似群コードの上限を踏まえて優先順位を整理します。理想的なのは、現在使用している商品・サービスを漏れなく押さえ、将来使用する可能性が十分にあるものまで指定することです。22個を満たすこと自体が目的ではありませんが、最初から候補を狭めるのも適切ではありません。幅広く拾い上げてから必要性を比較し、枠を有効に活用することが大切です。
先行商標を調査する
指定商品・指定役務を選ぶ際には、先行商標の調査が欠かせません。すでに登録されている商標や先に出願された商標との関係によっては、出願した商標が登録されない可能性があります。商標そのものの類似関係だけでなく、どの商品・サービスについて先行する権利が存在するかを確認することが重要です。
商品・サービスの類似関係を検討する際には、類似群コードが重要な判断材料となります。同じ類似群コードが付されている商品・サービスは、類似すると推定される場合があります。出願人が異なる商品だと考えていても、審査で類似と判断される可能性があるため、名称の印象だけで判断することは避けなければなりません。先行商標の登録内容と指定範囲を確認する必要があります。
調査によって抵触する可能性のある先行商標が見つかった場合には、指定商品・指定役務を見直すことも検討します。事業上の重要性が低い商品・サービスであれば、出願対象から外すことによって、拒絶理由が生じる可能性を抑えられる場合があります。ただし、登録の可能性を高めることだけを重視し、重要な商品・サービスまで外してしまうと、商標権を取得する目的が損なわれます。
そのため、調査結果と事業上の優先順位を照らし合わせて判断します。抵触の可能性がある場合には、商標の変更や指定範囲の調整などを比較し、権利取得の必要性と登録可能性のバランスを検討します。先行商標があるからといって直ちに出願を断念する必要はありませんが、調査をせずに候補をすべて指定することも適切ではありません。事前調査によってリスクを把握し、必要な権利範囲を確保することが重要です。
大きな概念から
指定商品・指定役務を選ぶ際には、個別性の高い名称だけでなく、より広い概念で整理された名称にも目を向けます。同じ区分には、広い範囲を表す名称から、対象を限定した具体的な名称まで存在します。どの名称を選ぶかによって権利範囲が変わるため、現在取り扱っている商品・サービスに一致する名称だけを探すのではなく、広い概念から検討することが大切です。
広い概念を指定する利点は、将来の事業展開に対応できる可能性があることです。市場環境や技術の進歩によって、新しい商品・サービスが登場することがあります。その際、既に指定している広い概念の範囲に含まれると解釈できれば、既存の商標権を活用できる可能性があります。個別の名称だけを指定すると、事業の変化に応じて必要な範囲が不足することも考えられます。
また、広い概念を適切に選ぶことで、限られた類似群コードの枠を効率的に活用できる場合があります。個別の名称を際限なく追加するのではなく、上位の概念で必要な範囲を押さえられれば、指定内容を整理しやすくなります。ただし、広い概念を指定すれば、その下位にあるすべての商品・サービスが必ず保護されるわけではありません。名称の意味や分類上の位置付けを確認する必要があります。
さらに、指定範囲が広くなるほど、先行商標と抵触する可能性にも注意しなければなりません。将来に備えて広く指定しても、先行商標との関係で登録が難しくなれば、期待した権利を取得できないことがあります。したがって、広い概念を優先するという方針は、無条件に最大範囲を指定するという意味ではありません。事業上の必要性、将来の使用可能性、登録可能性を総合的に考慮し、適切な範囲を選定することが重要です。
他の類の要否を最後にチェック
商標出願では、通常、先に区分を決め、その中から必要な商品・サービスを選びます。しかし、個別の商品・サービスを検討する過程で、当初選んだ区分だけでは不十分だと気づくことがあります。商品だけでなく関連するサービスも保護する必要があるなど、事業の実態によっては別の区分を検討すべき場合があります。そのため、指定商品・指定役務を一通り整理した後、他の区分を追加する必要がないか確認することが大切です。
最終確認では、商標を使用する場面を商品そのものに限定せず、関連するサービスや将来提供する可能性のあるサービスまで検討します。ただし、事業との関連性があるという理由だけで、すべての区分を追加すればよいわけではありません。区分が増えれば、出願手数料や登録料などの費用も増加します。保護範囲の拡大によって得られる利益と費用負担を比較する必要があります。
将来の事業展開を見据えて区分を追加する場合も、その実現可能性と優先順位を慎重に判断します。使用する可能性が低い範囲まで広げると、費用が膨らむ一方で、権利を十分に活用できないおそれがあります。他方、費用を抑えることだけを優先して必要な区分を外せば、事業拡大後に保護範囲が不足する可能性があります。現在の事業と将来の展開を分けて考えることが有効です。
最後に、区分ごとに保護の必要性、将来の使用可能性、費用負担、登録可能性を確認します。そのうえで、区分を追加することで得られる利益が、増加する費用に見合うかを判断し、出願内容を確定します。個々の商品・サービスを選ぶだけで終わらせず、事業全体を見渡して区分の不足や過剰を点検することが、費用対効果に優れた商標出願につながります。
まとめ
商標出願における指定商品・指定役務の選定は、商標権で保護される事業の範囲を決める重要な作業です。1区分につき類似群コード22個までという上限を踏まえ、必要な権利範囲を過不足なく確保する必要があります。
まず、現在使用している商品・サービスを漏れなく洗い出し、将来使用する可能性があるものも候補に加えます。最初から絞り込まず、幅広く拾い上げてから優先順位を整理することが基本です。
次に、先行商標を調査し、登録上の問題が生じる可能性を確認します。必要に応じて指定範囲を調整するとともに、個別性の高い名称だけでなく、広い概念の商品・サービスも検討します。ただし、範囲を広げるほど先行商標との抵触リスクにも注意が必要です。
さらに、選定の最後に他の区分を追加する必要がないかを確認します。費用の増加に見合う効果があるかを検討し、現在の事業と将来の展開の双方を考慮して出願内容を確定することが大切です。
当センターでは出願段階での商品・サービスの絞り込みを特に重視して支援しております。下記よりお気軽にご相談ください。



